2025年3月21日
2つのキーノートは、あのエイミー・C・エドモンドソン(Amy C
2つのキーノートは、あのエイミー・C・エドモンドソン(Amy C. Edmondson)!
※ハーバード・ビジネス・スクールの教授であり、組織行動学の専門家
題して、「Unlocking Growth Through Intelligent Failures: The Strategic Advantage of Embracing Fallibility」
「もっとも重要なのは、私たちが実際に推進し、称賛したい “賢明な失敗” という概念を再構築することです。」
——————————–
【超抜粋】
Simone Bilesさんの話を受けて、彼女の行動はまさに「Right Kind of Wrong(正しい間違い)」の象徴です。私の著書にも登場します。さあ、始めましょう。
________________________________________
【失敗とイノベーションの関係】
変化の激しい環境において、成功する組織は何か?
それは、学び続け、イノベーションを起こせる組織です。
イノベーションには失敗がつきもの。
私はこの「失敗」というテーマを30年近く研究してきました。
そして私が導き出した結論は…
失敗は人生の一部であり、組織運営においても不可避な存在だということです。
________________________________________
【でも…私たちは失敗を誤解している】
私たちは「失敗は悪いこと」と小さい頃から刷り込まれてきました。
学校でも、職場でも、「間違える=悪」とされてきたんです。
そして、失敗に対して自然に反応してしまうようになります。
•自分をよく見せたい
•悪く見られたくない
•正しくありたい
でも、それこそが組織の成長を妨げる罠です。
________________________________________
【2つの「失敗文化」】
私が出会った金融機関の幹部はこう言いました:
「今のような不確実な時代こそ、すべてがうまくいくことが重要なんだ」
うーん、気持ちは分かります。
でも、これは「失敗を許さない」という文化を作ってしまう。
その結果、何が起きるか?
「完璧」ではなく、隠ぺいが生まれます。
「創造」ではなく、恐れが生まれます。
________________________________________
【失敗の3分類(3つのタイプ)】
さて、ここから失敗を3つのタイプに分類して解説します。
________________________________________
① 基本的な失敗(Basic Failure)
簡単に避けられたミス。人為的なエラーが多い。
例:2020年、シティバンクの担当者が間違って9億ドルを送金
→ 画面上でチェックを間違えた。
→ 裁判所は「返還不要」と判断(finders keepers)。
「シンプル」=「小さい」ではない。
基本的失敗は大きな損害を招くこともある。
________________________________________
② 複雑な失敗(Complex Failure)
複数の要因が重なって起こる、予期しにくい失敗。
例:1967年、英国のタンカー「Torrey Canyon」が座礁し、史上最悪の原油流出事故に
•時間のプレッシャー
•船長の睡眠不足
•潮流、霧、機械トラブル
•ささいな選択の積み重ねが、大きな失敗に
一つひとつは小さいが、**「完璧な嵐」**のように結びついてしまった。
________________________________________
③ 知的な失敗(Intelligent Failure)
新たな挑戦の中で、予測のつかない領域で学びながら起こる失敗。
例:製薬会社イーライリリーの抗がん剤「Alimta」
•初期試験は好調
•有効性を測るフェーズ3で失敗
•しかしその失敗から「ある患者層だけが効果を示していた」と発見
•ビタミン(葉酸)を加えることで薬が再評価され、結果的に大成功に
失敗が学びを生み、大きな成果に繋がった例
________________________________________
【失敗のルール:「知的な失敗」の4.5条件】
「次に何か失敗が起きたら、”これは知的な失敗だった”って言えばいいんでしょ?」
と思った方もいるかもしれません。
でも、それにはルールがあります。
Amy氏は「知的な失敗(Intelligent Failure)」が満たすべき4.5の条件をこう定義しています:
________________________________________
1. 本当に未知の領域であること
誰かに聞けば分かったようなことなら、それは「学んでなかった」だけです。
________________________________________
2. 目的の達成を真剣に目指していたこと
ただの「いたずら」や「暇つぶし」ではダメ。
何かのゴールに向かっていたからこそ価値がある。
________________________________________
3. 十分な準備をしていたこと
試す前にちゃんと調査・仮説・計画があること。
「できる可能性が高い」と考えて行った挑戦だったこと。
________________________________________
4. 必要以上に大きな規模ではないこと
影響は最小限に。失敗するなら小さく早く。
________________________________________
0.5. 失敗から学びを得て共有していること(=投資を回収せよ)
ここが抜けると、「同じ失敗を繰り返す」だけになってしまいます。
________________________________________
まとめ:失敗3分類と対処法
基本的失敗 単純なミス、人為的、回避可能 防ぐ
複雑な失敗 複数要因の組み合わせ 軽減・対応力をつける
知的な失敗 新しい挑戦、学びがある 歓迎し、共有する
________________________________________
失敗の罠:「失敗させないためのパイロット」が逆に失敗を招く
Amy氏はある通信企業の例を紹介しました。
新しい高速インターネット技術を、郊外でパイロット運用 → 大成功。その結果、「都市部でもやろう!」と全面展開。
…結果は大失敗。
•注文の80%に遅延
•顧客不満爆発、評価スコア13%に転落
•社内士気も崩壊
•「成功する前提のパイロット」が罠だった
パイロット(試験)は失敗するべきなのです。
________________________________________
失敗する「良いパイロット」の4つの質問
1.通常の業務条件下でテストしているか?
2.学ぶことが目的か? それとも上司に見せるショーか?
3.評価や報酬はパイロットの結果に左右されないか?
4.パイロット後に実際に変更を加えたか?
「テストは、弱点を見つけるためにある」
成功させるために作るものではない!
________________________________________
【失敗から学ぶ組織へ:学習ゾーンを育てる】
成功する組織には、こんな3つの要素があります:
________________________________________
①「舞台を整える」– Set the Stage
• 目的の強調(Purpose)
何のためにやるのか?を全員が理解している
• 文脈への注意喚起(Context)
今やっているのは、確立された業務?それとも未知の挑戦?
→ これは「魚は水を意識しない」ように、普通は気づきにくい。でも重要!
たとえば、Merck社のCEO ケン・フレイザー氏はこう言いました:「バイオメディカル研究の仕事は、大半が失敗に終わる。
でもすべての試験は、科学と社会を前進させるステップだ。」
目的を共有し、文脈を明確にすることで、「失敗を許す場」が生まれます。
________________________________________
②「探索を促す」– Invite Exploration
良い問いを使うことで、人は思考し、発言し、行動を変えていきます。
良い問いの例:
•「他に見落としている視点はある?」
•「誰が別の意見を持っている?」
•「それが本当に起こったら、何が起きる?」
質問は「思考実験(Thought Experiment)」のトリガーになります。実験はお金がかかる。でも思考実験は無料!
________________________________________
③「応答し、強化する」– Respond and Reinforce
• スマートな失敗は「宝物」
→ 感謝し、共有し、活用する
• 繰り返されたらもう知的失敗じゃない
→ だからこそ「学ぶ仕組み」が必要
失敗報告を受けたらこう言おう:
「その情報、ありがとう。視界がクリアになったよ。」
________________________________________
【失敗パーティーはすべき?】Yes!
Silicon Valleyのように聞こえるかもしれませんが、Amy氏はこう言います:
イーライリリー社は1990年代に失敗パーティーを導入
理由は3つ:
1.チームの努力を讃えるため(失敗でも本気だった)
2.人を集めて、学びを共有させるため
3.「気づいた時」と「報告する時」のタイムラグを減らすため
「Alimta」の例でもあったように、失敗後に学びを深掘りしたことで、「ビタミンB不足の患者に効果がない」と判明し、薬は大ヒットになりました。
________________________________________
【4つの文脈 × ステークスのマトリクス】
Amy氏は、仕事環境を「文脈」と「ステークス」で分類しました。
一貫性(製造など) 高 間違いゼロへ。完璧を目指す
変動性(医療・航空) 高 慎重に。チームで対応する
新規性(研究開発など) 低〜中 試して学ぶ。失敗は学びの源泉
変動性×低ステークス 低 楽しんで試せる。改善の余地大
組織の中で、「ここはどのタイプの仕事?」と文脈を見える化することが大切です。
________________________________________
【心理的安全性とは?誤解しないで】
Amy氏が繰り返し強調したのが「心理的安全性(Psychological Safety)」です。でも、それには多くの誤解があると言います。
________________________________________
心理的安全性 ≠ 優しさ・ぬるさ・快適さ
•心理的安全性とは、
「この場で、アイデア・疑問・懸念・ミス・失敗を安心して話せると信じられること」
•これは**「気楽でいること」**とは違います。
•むしろ学びは不快なもの。でも、それが成長を生む。
________________________________________
真の心理的安全性とは、「率直に話せる場」+「高い基準がある場」
Amy氏は、4象限のマトリクスで説明します:
高い心理的安全性 低い心理的安全性
高い基準 学習ゾーン
不安ゾーン
低い基準 快適ゾーン
無関心ゾーン
目指すべきは「学習ゾーン」
→ 目的に向かって学び合い、高い基準を支え合う文化。
________________________________________
【心理的安全性を高める3ステップ】
________________________________________
舞台を整える(再掲)
•文脈の可視化(例:これは一貫業務?新規挑戦?)
•意義の共有(なぜこの仕事が重要か?)
________________________________________
探索を促す(再掲)
•良い問いを投げる(広げる質問+深掘る質問)
•話す「余白」を意識的に作る
•失敗のデザイン(パイロットをわざと揺らす)
________________________________________
応答し、強化する(再掲)
•失敗への反応=その場の心理的安全性を決める
•「ありがとう」の一言が、次の発言を呼ぶ
•「失敗パーティー」は文化変革のきっかけにも
________________________________________
【成功のレシピ:5つのステップ】
Amy氏が最後にまとめた「不確実な時代における成功のレシピ」です。
1. 高い目標を持つ(Aim High)
2. 多様な仲間とチームを組む(Team Up)
3. 知的な失敗を歓迎する(Fail Well)
4. 素早く学ぶ(Learn Fast)
5. 繰り返す(Repeat)