株式会社オフィスあんは、効果的な「場(組織)づくり」と
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【第三回】若手の育成に必要なものとは

新人にはまず経験を

私も毎年4月前後は、新入生社員を受け入れる側の支援業務が続きます。


「日本書紀」巻第29(天武2年5月乙酉)より......。(原漢文)

…詔(みことのり)して曰はく、「夫れ初めて出身(みやつかへ)せむ者をば、先ず大舎人(おほとねり)に仕へしめよ。
然して後に其の才能(かどしわざ)を選簡(えら)びて、当職に充てよ。
又婦女は、夫有ると夫無き、及び長幼を問ふこと無く、進仕へむと欲ふ者をば許せ。
其の考選(しなさだめかうぶりたま)はむことは官人の例に准へ」

意訳:
…天武天皇は命じた。
「初めて官途に就く者は、まず大トネリ(宿直、護衛、雑使にあたる下級官人)として奉仕させなさい。
そして後に、その才能を見定めて、正式配属せよ。
また婦女は、未婚既婚、年齢を問わず、奉仕したいという気持ちがある者には許可する。
婦女の選考は、一般男子の場合に準ぜよ。」…

前回の「律令/考課令」より遡ること約30年。
これは天武天皇が、中央で働く官人を前に「出身法」(初めて官途に就く場合のルール)について命を下す場面です。


当時、社会人(官人)の出発点は、一般的には「トネリ」からでした。
そもそも「トネリ」には「見習い」というニュアンスがあります。
つまり、見習い期間中にそれぞれの才能を見定めて、適材適所に配置せよ、というわけです。
いわば、古代の「新人養成機関・期間」とでも言えましょうか。


場が人を育て、人が場をつくる

平成25年、伊勢神宮では第62回目の御遷宮が行なわれます。伊勢神宮は1300年も以前から、
20年ごとに同じ形の内宮・外宮の社殿を交互に新しく造り替え続けてきました。
何百年も耐えうる建築物をわざわざ建て替える理由については諸説ありますが、
そのひとつが「宮大工を育てるため」というもの。


泳ぎ方の本を読んだところで、水に浸かってみなければ泳げるようにはならないように、
宮大工も建てさせてみなければ育たない...... 、という先人の教えのように感じられます。
集合研修でも人は育ちます。
しかし、「最高の人材育成の場は仕事の現場」ということなのでしょう。

13 銓衡人物。擢尽才能。為式部之最。

意訳:
能力・人柄などをよく調べて適格者を選び出し(適材適所)、
その者の才能を引き出し尽くすことができれば、式部省(いわゆる人事部門)の最とせよ。)


後進は、未来です

新入社員に「即戦力」を求めたい気持ちもよくよく分かります。できれば早く、「使える人材」になって欲しい。
しかし、「場」が人をつくります、仕事が、その役割が、その責任が、人を育てます。


確かに、新入社員はすぐには仕事ができません。しかし、育(羽含)めば、習います。
「習う」とは、羽を九九回羽ばたかせるという意味
(漢字の「白」には、九九という意味があります。百 - (ひく) 一 = 九九ですから!)
――その日々の経験こそが、彼らの成長の源泉です。


「まずは経験させ、その中でそれぞれの才能を見定めるように」と述べた天武天皇。
人材育成に関しては、なかなか懐の深いトップだったのではないでしょうか。


【参考】人が育つ主な要因(モルゲン人材開発研究所 澤田富雄先生の提言より)

❶「仕事」… 日常業務 、難易度の高い業務
❷「経験」… 複数の業務経験、勤務地経験
❸「先輩、上司」… 教える、良さを引き出す、最も身近なモデルがいる
❹「自分」… 自己啓発
❺「ライバルと仲間の存在」… 相互啓発
❻「必要性、切迫性、強制力」… せっぱ詰まること、期限、試験
❼「対話」… 双方向のコミュニケーション、納得姓
❽「環境づくり」… チャンスを与える、チャレンジさせる
❾「周囲の期待と激励」… スポーツ競技における応援と同様の効果
➓「時間」… 人材はすぐには育たない

そういえば、万葉集には、上述のトネリたちが、その主君(上司)について歌った歌がいくつか遺されています。
上司を慕っていたことがよくよくうかがえる歌々です。
いつの時代も、先輩や上司の存在が、後進育成に与える影響は少なくないようです。


【追記】「男女雇用機会均等...?」

上述の「律令」の引用の後半「また婦女は、未婚既婚、年齢を問わず...」のくだり。
なんだか「男女雇用機会均等法」を読んでいるような気になるのは、
私だけでしょうか。

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