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【第二回】「最善」を尽くそう!

1300年前の「求められる人物像」とは

私は女性として、ひとつの命を授かりました。
今年12才になる息子が私のお腹の中に息づいてくれたと分かったとき、私たち夫婦はまず、これをしました。
そう、「名前」を考えたのです。「こんな子供に育ってほしい」という願いを込めて……。


人が人を育むとき、まずは「こんな人に育ってほしい」と思うところからなのだと思います。


目標とすべき人物像を明示することが、人が人を育成するときの出発点です。
「仕事のできる部下が欲しい」――よく聞く話です。
では「仕事のできる」とは、御社ではどういう人物なのでしょうか。
何ができれば、どんな能力があれば、どんな意識をもっていれば「仕事ができる」のでしょうか。
それがはっきり言える上司は、育成体質の持ち主です。
逆に、どんな人材に成長すべきなのか知らされもせずに部下育成を振りかざされる部下は不幸です。


「律令」考課令 3-6(善条)より。

3  徳義有聞者。為一善。
4  清慎顕著者。為一善。
5  公平可称者。為一善。
6  恪勤匪懈者。為一善。

意訳:
人として守るべき道徳上の義務を果たしていると評判の者があれば一善とせよ。
道に反するところがなく節制していることが明白な者があれば一善とせよ。
私利私欲に走らず公務をなし心が正直だと称えられる者があれば一善とせよ。
力の限りを尽くしてその職務を怠らず精勤する者があれば一善とせよ。

これは史実に残る「求められる人物像」のひとつ。
今から約1300年前、律令官僚たちに「律令官僚たる者、斯くたる人物であれ」とされた「四善(しぜん)」と呼ばれる訓戒であり、
かつ官僚の勤務評定の基準項目としても用いられたものです。


いかがですか。特に3〜5は人間性が問われる内容となっており、
「ただ単に仕事ができればいいってもんじゃないのだよ!」と言わんばかりの気概が伝わってきませんか。


そして、1300年前の「人事パーソンたる者」!?

ちなみに、年に一度の勤務評定(「考(こう)」と呼ばれます)では、
この「善(ぜん)」とあわせて、「最(さい)」と呼ばれた「職務規定」が問われました。


「律令」考課令13(最条)より。

13 銓衡人物。擢尽才能。為式部之最。

意訳:
能力・人柄などをよく調べて適格者を選び出し(適材適所)、
その者の才能を引き出し尽くすことができれば、式部省(いわゆる人事部門)の最とせよ。)

これが、人事関係の職務にたずさわるものの「最」です。いかがですか。
この短文の中に、人事の職務の「髄」が語り尽くされていると思いませんか。

「こんな人で溢れる世の中は、間違いなく‘正しい'世になるに違いない」という思い、願いの込められた「最」と「善」。
それは、「最善を尽くす」という慣用句となって、今の時代にも引き継がれているのだろうと思うのです。


人材育成、不易流行

不易流行。
時代とともに変化するものもあれば、変わらないものや変えてはならないものもある...とは、前回も書きました。


職業人としてどうあるべきかは、「不易」の部分ではないでしょうか。
恐らく、1300年前の「できる人」は、現代にタイムスリップしてきても「できる」だろうと思われてなりません。
(そうであって欲しいとの願望も込めて......)。


御社では明確に「 こんな人に育ってほしい」と表現しているものがありますか。
もしくは、上司の方は、部下の方に対して「こんな人に育ってほしい」と伝えていますか。
そしてそれは、ただ単に職務遂行能力を列記するだけのものではなく、人として、職業人としてのあるべき姿を含むものですか。


次回は、今回の延長で、職務評価と昇格昇進についてとしたいところでもありますが、
時節柄(!?)、古代の「新入社員育成」についてとりあげます。


【追記】この単語って!?

上述の「律令」の引用、その編目は「考課」です。
お気づきになりましたか。
......そう、「考課」という言葉は1300年前から存在するのです。


制度設計の困難さ、
運用の稚拙さなどでよく人事課題のひとつとしてあげられる「考課」。


賛否両論あるでしょうが、
1300年前からあって今も存在するという時点で、
不必要ではない大いに存在価値のあるものだと信じられる私です。

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